理事長ご挨拶

                                           マコトノクサノ タネマケリ


令和

 平素より、(公財)岩手生物工学研究センターの活動にご理解とご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。

 さて、今年の干支は、十干が10番目の「癸(みずのと)」、10番目なので、物事の終わりと始まりを意味する他、この字に手辺が付くと「揆(はかる)」という文字になる為、「種子が計る事が出来る程の大きさになり、春が間近で蕾が花開く直前である」という意味もあるそうです。

 そして、十二支が4番目の「卯(う)」、これは元々「茂(しげる)」という字が由来と言われ「春の訪れを感じる」という意味、又、字の形が「門が開いている様子」を連想させることから「冬の門が開き、飛び出る」という意味があると言われています。

即ち、「癸卯(みずのと・う)」には、「これまでの努力が花開き、実り始める」といった縁起の良さが秘められているそうです。

近年、震災や数々の自然災害の発生、新型コロナウイルス感染症のパンデミック、家畜法定伝染病高病原性鳥インフルエンザ、豚熱等)の全国各地での発生など、多くの困難(壁)が目の前に立ちはだかっていますが、一致団結し真の汗を流しながら、牛の如く一歩一歩着実に前に進むことで、必ずや大きな希望を手にすることが出来るものと考えています。






公益財団法人岩手生物工学研究センター
理事長   小 岩 一 幸

 私は一関市出身ですが、県職員時代の3年間、花巻市に住む機会に恵まれ、そこで賢治先生の「精神歌」に出会いました。以後、岩手の農業振興に携わる自身のバイブルとして、県を卒業した今でも、大切に持ち続けています。

   日ハ君臨シ  カガヤキハ   白金ノアメ ソソギタリ

   ワレラハ黒キ ツチニ俯シ   マコトノクサノ タネマケリ

 

さて、SDGsの2番目の目標である「飢餓をゼロに」の達成に向け活動している国連WFP(World Food Programme)が作成している「ハンガーマップ2021」によると、アフリカ・アジアを中心に、世界人口の十分の一に当たる8億1千百万人が慢性的飢餓の状態にあるとしています。

一方、農林水産省によると、我が国における「食品ロス」は年間522万トンで、国民1人当たり、毎日お茶碗1杯分のご飯を捨てていることになるそうです。

ご案内の通り、我が国の食料自給率は先進国の中でも低く、多くの食べ物を海外からの輸入に頼っている状況にあり、こうしたことからも、社会全体での問題解決に向けた取組が必要ですし、何よりも、食料自給率を上げる為の生産面からのアプローチが重要であると考えています。

生工研は、平成4年、「岩手県設置の試験研究機関等のバイオテクノロジー研究を支援・促進するため、バイオテクノロジーに関する基礎的研究を行い、もって岩手県の農林水産業、食品工業等の産業振興に寄与すること」を目的とし設立されました。

 この間、賢治先生が現場で農家の悩みに耳を傾けたように、当センターも常に農林漁家等と問題意識を共有し、それらの課題解決に向けた基礎的研究に昼夜を問わず、一心不乱に取り組んできました。

 これまで、水稲・雑穀におけるゲノム育種法の開発、八重・赤花などリンドウ新品種の開発、病害診断・防除技術の開発、農林水産物の新規機能性の解明と有効成分の活用技術の開発、食用きのこの栽培技術の開発など、生産者等のニーズに即した試験研究を進め、公設試、大学、企業等との連携のもと、着実に成果を残してきています。

 

 今後とも、当法人が有する、非常に優れた資源(人材、最先端の測定機器等)を総動員し、国内はもとより世界にも通用する品種開発、栽培技術開発等を通じ、岩手を「我が国の食糧供給基地」として、今まで以上に盛り上げて参りたいと考えていますので、ご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願します。